アマトリチャーナとは?
ローマの伝統的なトマトパスタの究極の芸術です。
シンプルで使いやすい材料を使用しているにもかかわらずその味わいは飽きることなく、毎日食べたくなる中毒性を秘めた奇跡のパスタと言えます。
そのレシピは、ローマの過酷な時代から生まれた至高の贈り物。
グアンチャーレの旨味とペコリーノ・ロマーノチーズの香ばしさが、口の中で奇跡の調和を描く。
一口食べれば、ローマの熱い太陽と大地の恵みを感じられます。
飽きの来ない不朽の名品だからこそ、毎日でも食べられてしまう永遠の魅力にあふれています。
ローマ至上の伝統的なトマトパスタ、アマトリチャーナの魅力を知れば
きっとローマの地を踏みたくなる日が来るはずです。
料理の歴史や由来の大切さ
料理には、その土地の文化と人々の知恵が凝縮されています。
歴史を知れば、
食材と調理法の意味、そして料理に込められた文化的価値を理解できます。
異なる国や地域の料理の背景を知ることで、
異文化への理解が深くなり文化の垣根を越えた交流の入り口ともなります。
そして、長い年月を経て積み重ねられてきた人々の工夫や努力を知ることで
料理に対する尊敬の念が湧き食べ物が人間にとって何より大切なものであることを実感できます。
つまり、こだわり、愛情、信念、ポリシー、自分なりの解釈が生まれ
料理を作る人も、食べる人も
食の本質をより深く味わう事が出来ます。
アマトリチャーナの名前の由来
アマトリチャーナは
イタリア料理の代表格ですが
その名前の由来は
イタリア中部ラツィオ州の「アマトリーチェ」の町が発祥の地だと言われています。
アマトリーチェは
ローマから北東に約100kmほど離れた山岳地帯に位置する町で
かつては羊飼いや炭焼き職人が多く住んでいた村落でした。
素朴な材料を加えたシンプルな料理が
アマトリーチェの町から「アマトリチャーナ」と名付けられ
やがてローマを代表する家庭料理の一つとして親しまれるようになりました。
アマトリチャーナが生まれたローマの歴史
アマトリーチェの
伝承によれば、このパスタはもともと炭焼き職人や羊飼いなどの労働者階級の人々が
手軽に作れる庶民の食べ物として生まれています。
材料は、当時手に入りやすかった
乾燥トマト、グアンチャーレ、オリーブオイル、にんにく
そしてペコリーノロマーノという熟成山羊チーズなどを使っていました。
当時は食材が乏しく、現在のような豪華な料理はありませんでした。
そこで、シェフたちは限られた食材から美味しい一品を生み出しようとする工夫を凝らしました。
アマトリチャーナはその代表格であり、
ペコリーノ、グアンチャーレ、トマトソースというシンプルな組み合わせが
完璧な美味しさを生み出しています。
アマトリチャーナのレシピには多くのバリエーションがあり
基本的にはグアンチャーレが使われるが、パンチェッタが利用されることもあります。
また、
パスタの種類は、ブカティーニという
空洞のあるロングパスタを使えば
普通とは違う魅力的なパスタに仕上がります。
本場イタリアのアマトリチャーナの作り方
【材料】(2人分)
ブカティーニ 160g
グアンチャーレ 100g
ペコリーノ・ロマーノ 30g
トマトホール缶 100g
【作り方】
- 鍋に熱湯を沸かし、塩を入れてスパゲッティを柔らかくなるまで茹ます。
- フライパンにグアンチャーレを入れて弱火でゆっくり炒めます。
- トマトソースを加えてさらに混ぜます。
- パスタを湯切りし、フライパンに加えてよく混ぜます。
- 最後にペコリーノ・ロマーノを加え、塩コショウで味を調える。
- 完成
諸説ありますが、
グアンチャーレ、ペコリーノ・ロマーノ、ブカティーニ、トマトソースが
入っていれば「アマトリチャーナ」を名乗れます。
アレンジとして、
にんにく、玉ねぎ、赤唐辛子(鷹の爪)
EXヴァージンオリーブオイルなどを加えても良いです。
グアンチャーレ
・豚の頬肉、いわゆる豚トロを塩漬けにして熟成させたものです。
・表面に胡椒などのスパイスやハーブを刷り込んであります。
・豚のばら肉を使うパンチェッタよりも脂身が多いです。
・炒めた時に出る脂の出汁が最高に美味。
アマトリチャーナはグアンチャーレの脂の旨味や香りを楽しむパスタです。
イタリアではローマ料理として有名 な、アマトリチャーナや カルボナーラに使われます。
ペコリーノ・ロマーノ
ペコリーノ・ロマーノは、イタリア中部ラツィオ州が原産の硬質の酪農チーズです。
・原料は羊乳100%で作られてます。
・熟成食料品8ヶ月以上。長期熟成すると風味が濃厚になります。
・塩分濃度が高く、塩気が強めで渋みがあります。
・味わいは力強くコクがあり、ナッツのような香ばしい風味があります。
・硬くて砕きにくい質感だが、口に入れると溶けやすい。
・色は淡い黄色で、熟成が進むと黄色が濃くなります。
・形状は円筒形や円盤形が一般的です。
このペコリーノ・ロマーノは古代時代から作られており、長い歴史を持つチーズです。
パスタに欠かせないトッピングとしてよく使われ、そのままでもおつまみなどによく使われます。
コクと塩気のあった濃厚な風味が特徴的なチーズです。
ブカティー二
・形状は中空の筒状で、直径が3~4mm程のロングパスタです。
・主原料は硬質小麦のセモリナ粉です。
・名前の由来は、イタリア語で「小さな穴(bucati)」を意味する言葉からきています。
・表面が粗く、たっぷりのソースがからみやすいのが特徴です。
・茹でた時の食感はプリプリしていてモチモチしています。
・パスタの中に空洞があるので、ソースが内部まで絡みやすいです。
・アマトリチャーナやカルボナーラ、アラビアータなど、濃厚なソース料理に合います。
・乾パスタとして手に入りやすく、保存が効きます。
ブカティーニは形状に特徴がありますが、空洞がある独特の食感と、
ソースをよく絡ませられる点が特徴です。
イタリア各地で親しまれており代表的なロングパスタです。
家庭で作るアマトリチャーナ
グアンチャーレをベーコン
ペコリーノをパルメザンの粉チーズ
で代用しても気軽にアマトリチャーナを楽しめます。
インパクトは弱まりますが、毎日食べても飽きがこない優しい味に仕上がります。
アマトリチャーナに合うワイン
・キャンティ・クラシコ(トスカーナ)
渋みとタンニンがアマトリチャーナのトマトソースの酸味を見事に受け止めてくれます。
・モンテプルチャーノ・ダブルッツォ
しっかりとしたタンニンとスパイシーな香り、果実味がアマトリチャーナの味を引き立てます。
・ネグロアマーロ(プーリア)
濃厚でフルボディのスタイルがアマトリチャーナのコックを際立たせます。
・ロゼワイン(産地様々)
アマトリチャーナの塩気と相性が良く、さわやかな酸味と果実香が特徴のロゼワインもおすすめです。
一般的にはイタリア国内の赤ワインと合うとされています。
タンニンがしっかりしていてコックのある赤ワインが、トマトソースの酸味を受け入れ、ニンニクの風味ともよく合います。
産地や価格帯は様々ですので、
お好みのものを見つけてアマトリチャーナと一緒にお楽しみください。
まとめ
シンプルで奥深い味わいのアマトリチャーナは、ローマの歴史と文化を体現した極上の一品です。
作り方は簡単でありながら、厳選された素材と調理法にこだわることで、絶品の味が生まれます。
また、
にんにくや玉ねぎ、旬の野菜やキノコ、ローズマリーなどの香草を
トッピングしても楽しいパスタです。
(厳密には料理名が変わってしまいますが)
アマトリチャーナは基本にして王道のパスタ
そこから派生したパスタも多く存在します。
伝統のレシピにこだわっても良し。
分量を調整しても良し。
アレンジしても良し。
旨ければなんでも良し。
あまり深く考えずに
イタリア人の様な陽気な気持で
あなただけの解釈でアマトリチャーナを楽しんでください。
『愛のアマトリチャーナ物語』
武史は地方に住む普通の会社員
外食が大好きな31歳独身。
日々の仕事は忙しく収入もいまいちだが
3歳年下の彼女、直美と週末を過ごす事が幸せな時間だった。
付き合って3カ月がたち、
武史は大きな賭けを決意した。
「直美の為に料理を作って、カッコつけたい!!」
無謀だ、武史は料理などあまりしない。
しかし、武史の決意は意外と固かった。
料理は武史が大好きなパスタ一択
ブログやYouTubeでレシピや作り方を学び
簡単で初歩的なパスタ「アマトリチャーナ」を作る事にした。
「どうせなら本格的な材料を使いたい」
グアンチャーレ、ペコリーノ、ブカティーニなど、聞いたこともない食材だったが、
ネットで集めるのは容易だった。
少し高額ではあったが、アマトリチャーナを調べてるうちに、武史自身も本場の食材で作る事に興味がわいてきた
食材が届き、もたつきながらも試作を作り一口食べて衝撃が走った。
「ええやん…」
グアンチャーレの脂の旨味がトマトソースに混ざり合い、
濃厚で優しい味のソース、
さらにペコリーノチーズでコクが加わり、
ブカティーニの力強い食感、
今までに食べてきたパスタとは別物だった。
料理経験の乏しい武史には、なぜおいしくできたのかは理解できない。
これまでの一流の料理人が研究しつくしたレシピを、奇しくも料理初心者の武史は慎重に分量までも忠実に作っていた。
「まじかぁ…ええやん…」
独り言を言いながら、ニヤニヤしてる
テンション爆上がりだ。
週末
武史は初めて直美を自分の家に招待した。
八畳のワンルームのアパート
「おじゃまします」
直美は好奇心と少しの緊張を感じていた。
荷物を下ろし、とりあえずビールで乾杯、
武史はすぐさま料理の準備に取り掛かった。
少しでもスマートに作る為に、前日に二人分の食材、分量をあらかじめ準備している。
料理の内容は秘密にしていた。
ビールを飲みながら部屋を見渡す直美。
ベット、テレビ、パソコンデスク、本棚、小さいテーブル。
余計なものは一切なく、面白みのない部屋
キレイではあるけど、急いで片づけた感はぬぐえてなかった。
少しぎこちなく料理をしている武史を見て、直美は思った。
(微妙な味だったらどうしよう・・・)
(嘘でもほめるべきだよね?)
(トマト系のパスタ?かな?)
(一生懸命でかわいい)
「そんなに見られると失敗しちゃうよ」
武史は目線を合わせず直美に言った。
「ゴメン、じゃあスマホ見てるね」
それでも直美はスマホを見るふりして、チラチラ武史の料理姿を見ていた。
グアンチャーレの炒める音と、匂いが広がると直美は少し安心した。
料理が出来上がり、
「お待たせしました、イタリアローマが誇る『アマトリチャーナ』です。
最高のアルデンテに仕上げました、お熱いうちにお召し上がりください」
嘘くさいウェイター口調で武史が言った。
隣り合って座り、用意していた酒屋で一番安いイタリア産の赤ワインを開けた。
ワイングラスなどなく、普通のコップと武史にいたっては、マグカップで乾杯し
二人でアマトリチャーナを食べた。
「おいしい!!」
イタリア料理専門店じゃないと味わえない本格的な味に、期待していなかったギャップも相まって、直美は不覚にも感動した。
そもそも地方では本気のイタリア料理専門店は高級ホテル内にしかない。
大体はイタリアンのチェーン店かファミレスくらいだ。
アマトリチャーナをもぐもぐしながら、
ドヤ顔で直美の反応を見ている武史。
そして会話が途切れないように、ネットで得た稚拙なアマトリチャーナの伝説を一生懸命説明した。
「ぶっちゃけ、僕たちをアマトリチャーナで例えるなら、僕がグアンチャーレで直美ちゃんはペコリーノ・ロマーノになるわけで、この奇跡の組み合わせは最強で、
僕たちが生まれる前からこの出会いは運命で決まっていたんだよ」
(えぇー・・・!?)
(武史くんって、そういう事言っちゃう系の人なの?あ痛たたたのヤバい人かも)
直美は全力で感情を殺し、微笑んでいる
「武史くん、すごいね、おいしい、ありがとう、面白い、かっこいい」
何度も褒めてくれる直美が本当に愛おしい。
サラダもメインディッシュも無く。
有るのは、アマトリチャーナと安いワインと残り物のペコリーノチーズだけ。
でも、この二人の八畳の部屋だけはイタリアの空気に包まれていた。
「いつか、直美ちゃんと二人で本当にイタリアに行きたいね」
「いいねぇ、行きたい!!」
武史の思い付きのような提案に、笑顔で答える直美。
しかし、それは叶わないと直美は悟っていた
いつか・・・そんな日は永遠に来ないと
ワインも飲み干し、数枚のペコリーノチーズだけが残り時計は23時を過ぎていた。
幸せで楽しい時間は早く過ぎ去り、別れの時が近づく。
「そろそろタクシー呼ぼうか?」
武史はしょんぼりした犬が絶望を抱いたような顔をしている。
「その前に、、、」
「やらなきゃいけない事あるでしょ?」
直美はいたずらな笑顔で二ヤついてる。
「えっ!?」
二人に幸あれ
続く
次回「高カロリーの白い悪魔、カルボナーラと直美の憂鬱」
コメント